地籍調査が必要になる場面は、不動産取引や建物の新築・増改築、分筆や譲渡、相続などさまざまです。しかし、地籍調査についての知識が不足している人が多く、何をどうすればよいのか分からない、あるいは面倒だからといって手続きを踏まないことがあります。ここでは、地籍調査が必要な場合やメリットデメリット、費用について解説していきます。
地籍調査とは
地籍調査とは、土地の所有者や境界線、形状、面積などを調べることで、土地の正確な状況を把握する手続きです。地籍調査は、土地を利用する上で非常に重要な役割を果たします。
土地の所有権に関する問題
土地の所有権が明確でない場合、土地を売買することができなくなります。また、相続や贈与などの場合にも、所有権が明確でなければ、手続きが進められません。つまり、地籍調査をしなければ、土地の取引や相続、贈与などが困難になることがあります。
建築に関する問題
土地の形状や境界線が不明確な場合、建物を建てる際に誤った位置に建ててしまう可能性があります。建物を誤った位置に建てると、近隣住民とのトラブルになることもあります。また、法令に違反することになり、建物の取り壊しや罰金などの処分を受けることになる可能性があります。地籍調査をすることで、正確な境界線や形状が明確になり、建物を適切な位置に建てることができます。
土地の面積や形状が正確でない場合
固定資産税や都市計画税が不適切に計算されることがあります。これにより、税金が不当に高くなる場合があるため、地籍調査をすることで正確な税金の計算ができるようになります。
公共事業に関する問題
たとえば、道路や公園などの公共事業を行う場合には、土地の正確な形状や位置が不明確な場合、計画通りに進めることができなくなることがあります。また、災害時には、土地の所有者が明確でない場合、補償や復旧作業などがスムーズに進められないことがあります。
地籍調査のメリット
地籍調査には多くのメリットがあります。以下に、地籍調査の主なメリットをいくつか挙げてみます。
所有権が明確化される
地籍調査を行うことで、土地の所有権が明確になります。調査により、所有者の権利範囲や境界線が正確に確定されるため、他人からの不当な侵害や紛争を未然に防ぐことができます。
土地の詳細が把握できる
地籍調査は、土地の形状や面積、用途などを詳細に把握することができます。このため、土地の有効活用や資産価値の最大化が可能となります。
都市計画の策定に活用できる
地籍調査は、都市計画の策定に活用することができます。調査によって、地区や街区単位の土地利用状況や土地の所有権状況が把握できるため、都市計画の策定や再開発の検討に役立ちます。
不動産取引の信頼性が向上する
地籍調査は、土地の所有権や境界線を明確化することで、不動産取引の信頼性が向上します。調査によって、取引の際に問題が起こる可能性が低くなります。
土地の分割や譲渡がしやすくなる
地籍調査によって、土地の所有権や境界線が明確になります。このため、土地の分割や譲渡がしやすくなります。所有者は、自身の所有する土地の詳細な情報を把握することで、必要に応じて土地の有効活用や再編成ができるようになります。
税金の評価が正確になる
地籍調査によって、土地の正確な面積や形状が把握されます。これにより、固定資産税などの税金の評価が正確になります。また、土地の所有権や用途が明確化されることで、税金の納付に関する問題を回避することができます。
地籍調査のデメリット
地籍調査には多くのメリットがありますが、一方でデメリットもあります。以下に、地籍調査のデメリットをいくつか挙げてみます。
費用がかかる
地籍調査は、専門家の協力や測量器具の使用などにより、一定の費用がかかります。また、土地の形状や範囲によっては、費用が高額になる場合もあります。
手続きが煩雑
地籍調査には、一定の手続きが必要です。たとえば、測量士や土地家屋調査士の手配、地籍調査申請書の提出などが必要です。また、調査が終わった後には、地籍図や地籍簿の変更届出などの手続きも必要になります。
調査結果が思わしくない場合がある
地籍調査を行った結果、所有者が思っていた土地の形状や面積と異なる場合があります。また、境界線の位置が思わしくない場合もあります。このような場合、所有者は相手方と交渉する必要があり、手間や費用がかかることがあります。
要件が複雑でわかりにくい
地籍調査には、一定の要件が設けられています。たとえば、測量士が調査を行う場合には、一定の資格や保険に加入する必要があります。また、調査結果を地籍図や地籍簿に反映する場合には、一定の手続きが必要です。これらの要件が複雑でわかりにくい場合、所有者は手続きを行うために時間や労力をかける必要があります。
調査期間が長い
地籍調査は、調査対象の土地の形状や面積によっては、調査期間が長引く場合があります。調査期間が長い場合、所有者が土地を有効活用するための時間的余裕がなくなることがあります。
費用について
地籍調査の費用は、原則として土地の所有者が負担することになります。つまり、土地の所有者が地籍調査を依頼し、その費用を支払うことになります。
地籍調査は、土地の所有権や面積、境界線などを正確に把握するために必要な手続きであり、土地の取引や相続、建物の建設や改修などに欠かせないものです。そのため、地籍調査の費用は、土地所有者にとっては投資としての意味合いもあります。
ただし、地籍調査によっては、土地の所有権や境界線などが不明瞭であった場合、調査結果によっては相手方との交渉が必要になる場合もあります。この場合、相手方との合意が得られた場合は、調査費用を分担することもできます。ただし、分担する場合には、事前に合意書を作成し、署名・捺印する必要があります。
また、地籍調査に関する補助制度がある場合もあります。たとえば、地方自治体によっては、市町村税や都道府県税の軽減措置を行っている場合があります。また、国土交通省が実施する「土地情報活用促進事業」によって、地籍調査の費用の一部を補助することができる場合もあります。
さらに、地籍調査を行うためには、測量士や土地家屋調査士といった専門家の協力が必要です。これらの専門家に対しては、別途報酬が発生します。測量士の場合、一定の報酬基準が設定されていますが、土地家屋調査士の報酬については、市場価格や調査内容によって異なります。
まとめ
いかがでしたでしょうか、不動産取引や土地利用に関するトラブルが発生した場合には、地籍調査をしておくことで多大なメリットがあります。土地の所有権を正確に把握し、利用目的を明確にすることで、将来的なトラブルを回避することができます。そのため、地籍調査は、土地の所有者や不動産業者、土木関連業界など、多くの人々にとって必要不可欠な手続きと言えます。
(愛徳コンサルタント株式会社)