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道路橋点検士技術研修会を受けてきた【第69回】
─ 実技で点を落とさない準備と注意点

挑戦の記初出 二〇二六年九月

五月の初陣で実技に散った道路橋点検士。九月十五日から三日間、東京・浅草橋で開かれた第69回「道路橋点検士技術研修会」(一般財団法人 橋梁調査会)で、二度目の受講をしてきました。結果はまだ出ていませんが、前回の反省を踏まえて一つずつ丁寧に進めたので、今回は手応えがあります。そして二度受けてはっきり分かったことがあります。この研修会の山場である現地実習と記録様式の試験では、損傷の見立てそのものより、講義を聞いているだけでは気づきにくい「書き方のルール」で点を落とす人が多い、ということです。これから受ける方のために、事前の準備と当日の注意点をまとめます。

※2026年度(第69回)時点の内容です。研修会独自のルールは回によって変わる可能性があるので、必ず当日のオリエンテーションと講師の説明を優先してください。

書くのは三つの書類 ─ 採点の中心は「整合」

試験で求められるのは、主に次の三つです。流れとしては損傷図 → その3-3 → その3-4の順に情報を写していくイメージで、この三つが互いに食い違っていないことが採点の中心になります。

書類内容単位
損傷図(データ記録様式 その3-1相当)どこに・どんな損傷が・どの程度あるかを図に書く図面上
その3-3 損傷程度の評価記入表要素ごとに、損傷の種類すべてについてa〜e/NAを記入要素番号(4桁)
その3-4 損傷程度の評価結果総括部材ごとに、進行している損傷を整理部材番号(2桁)
損傷図から3-3へ、3-3から3-4へ ─ 写して、揃える
整合

講義で印象的だったのが採点の考え方です。その3-3は自分が書いた損傷図と同じ内容になっていればよく、その3-4は自分のその3-3の最悪値が拾えていればよい。損傷図そのものが模範解答と違えばそこで減点される可能性はありますが、3-3・3-4は「自分の損傷図と整合しているか」で見られます。行の順番(床版が先か主桁が先か)は問いません。

逆に、損傷図にない損傷を3-3に書いたり、損傷図と3-3で程度が違ったりすると、減点または0点。これはオリエンテーションでも明言されていました。最後に三つを突き合わせる時間は、必ず確保してください。

事前にやっておくべきこと

テキストの該当ページに付箋を貼っておく

オリエンテーションでもページ指定がありましたが、次のページは現地でも試験でも何度も見返します。

野帳(その3-3)の「骨組み」を先に作っておく

その3-3は、全要素 × その部材で評価すべき全損傷種類を一行ずつ書く表で、行数がかなり多くなります。現地で一から書いていては時間が足りません。評価範囲の要素番号が分かった時点で、表-4.1.1を見ながら損傷の番号だけ先に全部書いておくのがおすすめです。今回の範囲で評価した損傷の種類の数は次のとおりでした。

部材材料損傷の種類
主桁・横桁・縦桁・下横構12種(①②③④⑤⑩⑬⑱⑳㉑㉒㉓)
床版コンクリート14種(⑥⑦⑧⑨⑩⑪⑫⑬⑱⑲⑳㉑㉒㉓)
橋脚(柱部・壁部/梁部/その他)コンクリート11種(⑥⑦⑧⑩⑫⑱⑲⑳㉑㉒㉓)
支承本体12種(①②③④⑤⑬⑯⑳㉑㉓㉔㉕)
アンカーボルト7種(①②③④⑤⑯㉓)
沓座モルタルコンクリート6種(⑥⑦⑫⑯⑳㉓)

試験の現地実習では、手書きの野帳だけが持ち込み可でした。事前準備も手書きで野帳に書いておく必要があります。部材ごとの対象損傷をすばやく引きたいときは、弊社の部材記号の検索アプリも使えます(部材を選ぶと、その部材で対象とする損傷の種類まで表示します)。

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講義で聞いた「事前の下調べ」

講師からは、現地に入る前にその橋がいつ造られ、何年の道路橋示方書で設計され、どんな補修・補強を受けてきたかを把握して臨むように、という話もありました。今回の実習橋は昭和44年完成で、昭和39年の示方書で設計されたもの。この年代の床版は耐荷力の低下が知られていて、実際に縦桁で補強されていました。全国に約73万橋、5年に1度の点検が法律で義務づけられている中で、点検は維持管理の起点となる情報収集の仕事だという言葉が印象に残っています。

Excelで管理すると見直しが楽

私は野帳の内容をExcelに入力し、その3-3のデータからその3-4(部材ごとの最悪値、aは省略)を関数で自動作成するようにしていました。手書きの答案と突き合わせると、行の抜けや、3-3と3-4の食い違いがすぐに見つかります

記入の基本ルール ─ ここで落とす人が多い

a・NA・NONの使い分け

記号使う場面
a評価対象の損傷だが、損傷が見られない
NAその要素では明らかに対象外の損傷(例:ボルトが使われていない要素の③ゆるみ・脱落)
NON/a全く損傷がない要素は、損傷の種類を「NON」、損傷程度を「a」とする

講師が強調していたのは、aやNAの行を省略しないことです。損傷がある行だけを書いてくる人がいるそうですが、それでは「aの箇所をちゃんと見たのか」の証拠が残らず、減点対象になります。

その3-4の書き方(本研修会のルール)

現地実習で気を付けるポイント

講習冒頭の「班ごとの前提条件」は必ずメモする

班ごとの構造の違いによって、NAになる損傷が変わります。今回、講習の最初に説明があったのは次のような内容でした。

そして白状すると、私はこの主桁の③を聞いていたのに忘れていて、本番でaと書いてしまいました。聞いた瞬間に、野帳の該当行へ直接書き込んでおくのが確実です。

「どの部材の損傷として数えるか」を意識する

床版は「⑥ひびわれ」ではなく「⑪床版ひびわれ」

床版のひびわれは⑪床版ひびわれで評価し、パターン(1方向=(1)、2方向=(2))を記入します。同じ床版の⑥ひびわれはNAにします。

鋼板巻立ての橋脚は「⑩補修・補強材の損傷」で拾う

耐震補強で鋼板を巻いたRC橋脚は、迷いやすいポイントです。叩いて浮きの音がしたら、⑫うきではなく、⑩補修・補強材の損傷(分類1:鋼板)で評価し、鋼板のうきはe。⑫うきで書いた人が何人もいたそうです。

支承は「腐食」が三つ並ぶのが正解

鋼製支承で腐食が進んでいる場合、腐食に関わる損傷が三つ並びます。⑯支承部の機能障害は、評価がaかeしかありません

損傷評価
①腐食程度に応じて評価
⑤防食機能の劣化評価
⑯支承部の機能障害e、分類1、パターン(2)=著しい腐食

⑦剥離・鉄筋露出と㉓変形・欠損はセット

要領では、どちらかがあればもう一方でも拾うことになっています。本研修会では片方だけでも減点しないとのことでしたが、両方書くのが望ましいです。

損傷図は手書き ─ 紙面の割り付けを先に考える

今回いちばん苦労したのが、損傷図が手書きだったことです。要素ごとに損傷を書き込んでいくうちにスペースが足りなくなり、とうとう紙の裏にまで書いてしまいました。それが採点にどう響くのかは、正直分かりません。

反省を込めて言えば、書き始める前にどの要素をどこに、どれくらいの大きさで描くかを決めておくべきでした。損傷の多い部材ほど書き込みが増えるので、現地で見た量を思い出しながら余白を配分しておくと、裏に回るような事態は避けられたはずです。

現地の損傷図パネルは「代表的な損傷のみ」

現地に貼り出されている損傷図パネルは、代表的な損傷だけを表示したものです。すべての損傷が載っているわけではないので、パネルを写して安心しないように。

覚えておくと評価が早くなる基準(抜粋)

①腐食(深さ × 面積)

区分深さ面積
b
c
d
e

面積の大小は50%が目安。深さの方が耐荷性に関わるため、深さが大きい方が厳しい区分になります。

⑤防食機能の劣化(分類1:塗装)

区分状態
c最外層の変色・局所的なうき
d部分的に剥離して下塗りが露出
e劣化範囲が広く、点錆が発生

⑥ひびわれ(RC)の幅

幅の区分ひびわれ幅
0.3mm以上
0.2mm以上0.3mm未満
0.2mm未満

間隔は0.5m未満が「大」、0.5m以上が「小」。幅と間隔の組み合わせで区分を決めます。

⑩補修・補強材の損傷(分類1:鋼板)

区分状態
a損傷なし
cうきはないが、シール部の一部剥離・錆・漏水のいずれかがある
e鋼板のうきがある/シール部がほとんど剥離している/アンカーの腐食やうきがある

bとdはありません。

③ゆるみ・脱落

ボルト一群あたり5%未満ならc、5%以上ならe。一群のボルトが20本未満の場合は、1本でも該当すればeです。

こうした評価区分を体に入れるために、私は自作の損傷程度の評価アプリで稽古してきました。損傷の状態を選ぶだけでa〜eを判定できるので、基準表を引く練習にどうぞ。

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提出前のセルフチェックリスト

おわりに ─ 差がつくのは地味なところ

損傷の見立てそのものは、現地で講師の説明を聞きながら確認できます。差がつくのは、「全部の行を書く」「冒頭の前提条件を反映する」「三つの書類を整合させる」という地味な部分でした。五月の初陣では、そもそもそれが見えていなかった。二度目の今回は、少なくとも何で点を落とすのかは見えていて、そのぶん丁寧に書けた手応えがあります(それでも主桁の③はやってしまいましたし、損傷図は紙の裏まで使ってしまいましたが)。

合否の通知が届いたら、初陣の便りで約束したとおり、勝っても負けてもこの便りでご報告します。これから受講する方の参考になればうれしいです。

※本記事は筆者個人の受講体験(2026年・第69回)に基づくものです。研修会の構成・内容・運用は変更される場合があります。最新の情報は必ず一般財団法人 橋梁調査会の案内でご確認ください。

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